投資としての賃貸経営は、投資資金の回収が進むよう、より収益性を重視して物件を選ぶ必要がある。入居者が集まる物件はどんな基準で選べばよいのかを把握しておこう
持ち家を賃貸に出す場合の賃貸経営とは異なり、投資としての賃貸経営では、賃貸用物件を購入するところから始めるため、その初期投資資金を回収できるよう、収益を上げる物件を選ぶことが何よりも大切だ。投資資金が回収できなくなるかもしれない大きなリスクは何としてでも回避したい。
賃貸経営は、入居者がいなければ成り立たない商売。「儲かりそうだから勧められた賃貸用マンションを買う」という漠然としたものではなく、入居者にとって魅力を感じる物件を自分の目で選ぶことが何よりも大切だ。
不動産投資で重要なのは「分からないことには手を出さない」こと。自分で賃貸経営を成功させようとする気力や、手間ひまをかける時間がない、知識が浅い・勉強する時間がないといった人は、やるべきではない。
物件選びの際には、利回りが一つの重要な判断基準となる。
利回りとは、投資額(物件の購入価格など)に対して、1年に何%の利益(家賃収入など)を得られるか示したもので、利回りが高いほど収益性は高いということ。
利回りの算出方法は複数あるが、一般的に「表面利回り」「実質利回り」がよく使われている。
表面利回りは、融資の返済額や物件の維持費等は含まず計算するもので、おおまかに利率の割合を見る際に利用する。不動産広告に表示されているのは、この表面利回りの場合がほとんど。
実質利回りは、必要な経費(税金、管理費、修繕費など)をすべて含んで計算するので、より正確に収益性を判断できる。想定家賃と想定経費を元に計算する。
表面利回りでまず見て、次に実質利回りを算出して、具体的な手取りがいくらになるのかをチェックして物件購入の検討材料とする。
■利回りの計算方法
表面利回りが高いからといってそれが収益のよさに結びつくわけではない。実際には、経費は物件の種別や築年数、立地等によって違いがあるためだ。
例えば表面利回りの同じ物件が新築と中古であったとして、この2つの物件の特色によって実質利回りは変わってくる。新築物件は、修繕がすぐ必要とされることはないので、表面利回りと実質利回りとの差は大きくはないが、中古物件は、新築に比べて修繕の必要性が高いので、場合によっては差が大きく開くこともある。
管理費、修繕費、税金などの経費をかけずに済む物件のほうが、実質利回りが高い傾向にある。経費の無駄を省いて収益を上げることで、安定収益の確保を目指したい。
良い物件かどうかはデータだけでは判断できない。下記のように不動産会社へヒアリングをしたり、自分で現地調査をするなどして確認しよう。
購入予定の物件がファミリータイプなら、ファミリー層が暮らしやすい環境(学校や病院などの立地)なのか、シングルや共働き夫婦向け物件なら、交通の利便性や夜遅くまで買い物できる店舗があるかなど、予想される入居予定者の視点で物件をチェックするとよい。
また、自分が行ったことのない知らない地域ではなく、知っている地域の物件を選択するべきだ。そして自分自身がそこに住みたくない、家族にも住まわせたくないという物件は買わないほうが賢明だ。
賃貸経営を賢く行うためのノウハウや豆知識、成功のためのコツなどをご紹介いたします。
文/金井直子 イラスト/江口修平 監修/中村喜久夫(株)不動産アカデミー