賃貸経営を事業とする場合、収益性を高める工夫をより追求したい。自分に合った経費削減方法や節税対策を実行して、コスト管理を徹底していくことが大切だ
賃貸経営で収益を得るために必要なことは、基本的に空室を出さないこと。そこからさらに収益を上げるには、経費の無駄を省くことが非常に有効だ。
管理は自分でする・不動産会社に任せるという違いだけでも、年間収支に影響するし、委託先の会社や委託内容によっても収支が異なってくる。
自分でできることは自分で行うと収益は上がる。だが、会社員など本業が忙しい人ならば、自分でできることには限界がある。何を委託すべきか、どんな経費を削減できるかは人それぞれ異なるので、コスト管理を徹底して、自分に合った経営内容を組み立てることが必要だ。
不動産賃貸業を開業する際には、「個人事業の開廃業等届出書」を開業から1カ月以内に税務署に届出る必要がある。期限を過ぎてしまうと、節税の恩恵が受けられない場合がある。
確定申告は「青色申告」か「白色申告」で行うことになるが、事業的規模であると税務署が判断する場合は、「所得税の青色申告承認申請書」を開業から2カ月以内に提出して、青色申告することになる。事業的規模とされる基準は一般的に、アパートやマンション、一戸建ての建物が5棟以上もしくは部屋数が10室以上。この基準に満たなくとも社会通念状、事業と称する程度の規模であれば、青色申告が承認されることもある。事業規模と判断されない場合は白色申告となる。
青色申告で行うと、正規の帳簿(現金出納帳、経費帳、売掛・買掛帳、固定資産台帳など)にきちんと記帳する手間がかかるが、最高「65万円の特別控除がある」「家族への給与が全額必要経費になる」「損失を繰り越せる」など大きなメリットを受けることができる。また青色申告では、税務署で申し込むと、税理士が自宅に来て、無料の記帳指導を行ってくれるのでぜひ利用しよう。
■「青色申告」と「白色申告」の違い
青色申告 | 白色申告 | |
---|---|---|
開業時の 必要な届け出 |
「個人事業の開廃業等届出書」 「所得税の青色申告承認申請書」 「青色申請事業専従者給与に関する届出書」 |
「個人事業の開廃業等届出書」 |
帳簿の記帳義務 | 正規の簿記による帳簿の記帳が必要 | 正規の簿記による帳簿の記帳は不要(事業所得が300万円を超えた場合は必要)だが、収支内訳書作成のために必要な帳簿を付けることになる |
確定申告時に提出する決算書 | 損益計算書、貸借対照表 | 収支内訳書 |
特別控除 | 65万円(損益計算書、貸借対照表を提出する場合) | なし |
10万円(損益計算書のみ提出する場合) | ||
家族の給与の扱い |
全額必要経費になる (あらかじめ「青色申請事業専従者給与に関する届出書」に給与額の届け出などが必要) |
必要経費になる (ただし上限があり、配偶者86万円まで、扶養親族50万円まで) |
家事関連費の扱い | 自宅で事業を行っている場合、業務上必要な区分を明確にできれば、家事関連費(光熱費など)を必要経費にできる | |
赤字の扱い | 赤字損失分を3年間繰越控除するか、前年の所得税の還付を受けることができる | なし |
開業や帳簿付け、確定申告などで不明な点があれば、最寄りの税務署に相談しよう。確定申告については、下記の国税庁のサイトに詳細が掲載されているので、参考にしたい。
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/kakutei.htm
不動産所得がある場合、会社員でも自営業者でも、所得税の確定申告をすることは義務となるが、必要経費を計上できるなどの事業上の特性や、青色申告の特典を活かして節税に努めよう。
賃貸経営を賢く行うためのノウハウや豆知識、成功のためのコツなどをご紹介いたします。
文/金井直子 監修/中村喜久夫(株)不動産アカデミー