パークシティ小岩 ザ タワー （取材レポート）

当社は、本物件の共用部となる部分の内装デザインを担当しています。プロジェクトには、約5年前の基本設計が固まる前段階から関わらせていただきました。早い段階からデベロッパーなど関係各社と一緒につくり上げていくことで、デザインの自由度が高まり、プロジェクト全体の完成度にも寄与できるというメリットがあります。
小岩は暮らしの街として長い歴史があり、立地的には郊外ではなく都市といえるでしょう。そんな小岩のこれまで知られていなかった魅力を引き出し、新しい価値を創造することが本プロジェクトの重要な役割だと捉えています。そのひとつが自然です。現在の小岩駅前は緑が少ないですが、少し離れれば河川敷や公園があり、街全体としては自然溢れるエリア。その事実を本プロジェクトを通じて可視化し、駅前に緑豊かな空間を生み出すことで、住民の方、訪れる方に豊かな価値を感じていただけたらと考えました。
デザインの軸としたのは、自然とのつながりを重視した「バイオフィリックデザイン」の概念です。自然を五感で感じられるデザインは、人間のストレスを軽減し快適性を高めるといわれています。本物件においても木の枝ぶりなど自然が持つ有機的な曲線や、朝日や木漏れ日といった様々な光など、自然の要素を多数取り入れることに注力しました。同時に都市としての小岩の個性も感じられるよう、スタイリッシュな魅力も兼ね備えたデザインを目指しています。

「バイオフィリックデザイン」は共用部各所の細かい部分まで意識して取り入れています。
柔らかい光に包まれたエントランスを抜けると、高さ約8m・二層吹き抜けの大空間が広がります。各フロアにはコミュニケーションやワークスペースとして多様な使い方ができるラウンジがあり、二層をつなぐ階段や柱は、力強く枝や根を張る大樹をイメージしてデザインしました。さらに、木立の中の木漏れ日のような光を放つロートアイアンの壁面照明、水紋のような光の広がりを感じられる天井の間接照明など、至るところに自然のモチーフを施しています。
2部屋あるゲストルームは、それぞれ和と洋で異なる趣のデザインとなっています。和室では障子や塗り壁など日本古来の素材をモチーフにした設えと曲線を活かしたのに対し、洋室はより直線を多用したスタイリッシュなデザインに仕上げました。
そして最上階には、東京を代表するランドマークも望めるスカイラウンジが広がります。ここでも木やタイルなどの自然素材を用い、ナチュラルな曲線が生きる空間となっています。昼は馴染みのカフェのようなカジュアルさを、夜は夜景を楽しむバーのような落ち着いた雰囲気を感じていただければと思います。開放的なコーナーウィンドウには、眺望がよりクリアに際立つよう木のフレームを施しました。小岩の空と自然を感じながら、贅沢な寛ぎのひとときを満喫していただけたら嬉しいです。

本プロジェクトは駅の目の前という立地上、街のランドマークとなる建物です。駅を出た方がまず目にする景色として、夜であっても緑豊かな温かい場所に帰ってきたと感じていただけるようなシーンを光で演出したいと考えました。「Feel the Parks」というコンセプトを紐解きながら、各エリアの個性に合わせた照明をデザインしています。
ランドスケープの屋上テラスは、まさに公園のような憩いの場。豊かな陰影を作り出すことで、植栽が一層美しく照らされ、ここで過ごしたいと思える心地よい空間を目指しました。子どもたちが集まる滑り台では、グラデーションを描くカラーライティングによって川のようなゆらぎとワクワク感を感じていただけます。
マンションの共用部に関しては、外からのつながりを大切にしながら、動線に沿った抑揚ある光のリズムを演出しています。全体的にリラックスできる落ち着きを重視しており、直接目に入る光は極力用いず、開放的なロビーで天井を見上げた時にも眩しさを感じない、柔らかい間接照明を多用しました。
普段は意識しないかもしれませんが、暮らしの中で安らぎや心の豊かさを感じるのに、光の役割は非常に重要です。本プロジェクトにお住まいになる方には、緑や水を感じられる心地よい明かりの中で豊かな暮らしを楽しんでいただきたいですし、そんなライフスタイルを新しい小岩の文化として築いていってほしいと思います。