プラウド一番町一丁目 （取材レポート）

都市計画家・都市デザイナーであり、東北から日本の未来を発信するための持続可能な地域づくりの研究や実践を進めている宮城大学・風見正三教授に、都市における大学と共生する暮らしについて伺った。

「都市というのはその名の通り、そこの長が住み行政の中心となる『都』と、経済の中心となる『市場』の両方が集まった場所が『都市』として形作られています。もともとの都市の中心部には生粋の歴史というものが詰まっていて、そこに必ず歴史的な意味があります。仙台は『千代（せんだい）続く街』という意味で、持続可能なまちづくりという願いがこの名前に秘められています。伊達政宗公は粋な人でしたから、仙台を新しい文化的な街にしようとしていたんですね。その流れを汲み、文化的な施設が中心に集められ、青葉通を中心とした緑豊かな『杜の都』が形作られてきました。その『杜の都』が残されているのが、青葉通から西公園、広瀬川の一帯なんですね。伊達政宗公がそこにいた歴史の中に触れながら暮らすということには大きな意味があります。その歴史のある街の本質、核心の部分に触れられることが、都心に住むひとつの魅力ともいえるでしょう。ですが、都市の中に住むと今度は自然が欲しくなりますよね。緑は人が本能的に環境を良くするために必要としているもので、豊かな緑が残されている広瀬川や西公園、大学キャンパス内を散策する休日は、心の豊かさにも繋がるでしょう」。

「この一帯は東北大学を主として、最近では泉キャンパスに移転していた東北学院大学が五橋に戻ってきました。都心に大学が戻りつつあることの表われです。『都』の中の一つの機能として位置づけられており、行政や経済など新しい社会の仕組みをつくる学問を担うのが大学です。

イギリスの有名大学では『街そのものが大学』のようなものになっていて、最先端の研究が自分の住んでいる街から生まれる喜びに満ちています。アカデミズムな人たちが集まっている場所が、その雰囲気に包まれた大きな空間を作っていく。知的な拠点がそこにあり、大学図書館をはじめとしたその空間が共有できることは世界的に見ても価値があるところ。大学のそばに暮らすということは、そういう場所に住むことであるという価値をもっと知ってほしいですね。

また、大学の役割として教育・研究はもちろんのこと、社会貢献が重要な要素となっています。スタートアップをはじめとした起業や、リカレントとリスキリングといった『大人の学び直し」に対する情報を積極的に発信しており、大学に入るということではなく、近くにあるだけでそれらを活用することができます」。

子育て世代のファミリーには気になる教育環境や子育て環境。現地周辺は徒歩2分の片平丁小学校をはじめ、五橋中学校、東北大学片平キャンパスなど、アカデミックな雰囲気に包まれる。今回は片平丁小学校に通う児童の保護者に周辺の子育て環境についてお話を伺った。

仙台市内に生まれ育ち結婚後から現地周辺エリアに暮らすSさん。「夫が都心に自転車通勤できるくらい街ナカがいいと思っていました」という。その中でも「以前祖父母が住んでいた」という馴染みのあるエリア。「これだけ街の中心部に近いのに、広瀬川の雄大な自然がこんなに近くにあって、昔ながらの落ち着いた雰囲気があるのは魅力ですね」と語る。

そんなエリアの特性を反映しているのか、「街ナカの学校にしては、校風も保護者の皆さんも穏やかな印象がありますね。子どものあいさつも活発な気がします」という。古くから培われてきた地域と学校の歴史と、この街の雰囲気が気に入って新しく移り住んでくる人たちが上手に融合して、のびのびとした子育て環境が育まれてきたようだ。

「子どもたちは児童館や片平公園でよく遊んでいます。五橋通から南側はそんなに大きな通りを渡ることもないので、そのあたりの安心感もありますね」。

吹奏楽やバスケットボールなどの活動も盛んで、学校支援地域本部としての活動もスタートした片平丁小学校。地域の子どもたちを地域のみんなで育てていく取り組みにも注目される。

4人のお子さんがすべて片平丁小学校～五橋中学校に在学または卒業しているというOさん。
「周辺にはこのエリアに長く住まわれている方が多く、ママ友も同校の出身という方が多い。皆このエリアが好きで町内会の活動も一生懸命。居心地の良いコミュニティが形成されています」と語る。地元の保育園は子どもたちに寄り添ってくれ、保護者に対するケアがしっかりしていたという。卒園してからも節目には近況報告に行くなど絆が深まっている。同様に、片平丁小学校、五橋中学校も「先生たちの『子どもたちをサポートする』という意識が高く、ちょっとしたことでも聞きやすいですし、対処も的確で素早かった印象があります。宮城県工業高校や東北大学、周辺の事業者等と連携したプログラムもあり、早くからそういったものに触れられるのも利点ですね」。さらに、勉強だけではなくスポーツやブラスバンドなども盛んで『文武両道』を目指すことができ、中学校は始業のチャイムを鳴らさずに生徒の自主性を育んでいるという。
普段の生活エリアとしてはアーケード街や藤崎、三越、仙台駅前がお出かけ圏に。共働きのため子どもを片平児童館に預けることも。「未就学～低学年の頃は児童館と隣接する片平公園や五橋公園でよく遊んでいますね。西公園もサッカーやバスケの練習ができるので活用しています」と語るように、学年や目的によって選べる公園が身近に複数あるのも一つのポイントであろう。