ファインレジデンス武蔵新城 （取材レポート）

「この街の良さは、バランスがいいところかもしれません」とHさん。4年前から賃貸マンションに暮らし、子どもの誕生をきっかけに同エリアでマンションを購入した。「子育て」を考えた時に、離れがたい魅力があったのだと言う。その住環境に惹かれてか、近ごろ周辺には同じ年代の子育て家族が増えてきたそうだ。道行く小学生が、元気よく挨拶をしてくれるんですよ、と笑う。

「私たちの家族は、駅から少し離れたところに住んでいますが、それをマイナスと捉えていません。このエリアは道がフラットで歩きやすいこともそうですし、繁華街から程よく距離を置くことで、子育て面においてはむしろ安心感が大きい。周辺には多摩川の河川敷や等々力緑地──サッカーJリーグ『川崎フロンターレ』のホームスタジアムになっているので、試合がある日は街が異様に盛り上がります（笑）──があり、自然環境も充実。休日はクルマで出かけることが多いのですが、武蔵小杉エリアが近いのでグランツリー（大型商業施設）までショッピングに行くこともあります。フードコートも充実していて、子連れにうれしいスペースやサービスが多いところがいい。武蔵溝ノ口も近いので、家族でお出かけするのにはとても楽しいエリアだと思います」。

「武蔵新城には商店街が9つ。なんでこんなに多いの？ と不思議なほどです」。笑顔で教えてくれたのは、北口にある商店街「新城北口はってん会」会長の小池さん。各地で商店街のシャッター通り化が問題になる中、武蔵新城の商店街は活気にあふれ、イベントも随時開催されている。「たとえば、1000円でお酒と食事を気軽に楽しめる『せんべろ』企画を武蔵新城全体でやったり。夏には提灯を吊るして、お店の前で露店を出す『はってん会夜店市』を開催しましたが、そちらも大盛況でした」。武蔵新城の商店街はチェーン店が少なく、個人が経営する店が多い。ちょうど代替わりの時期にあり、親から店を継いだ人と外から来て新たに店を構えた人が混在しているが、新旧の店主らが結束し「街の人と一緒に商店街を盛り上げよう」という意識が強いのだという。

ほかにも、SNSで街の魅力を発信するなど地域振興に熱心な武蔵新城の商店街。同時に、安全への取り組みも欠かさない。「自転車の無灯火運転には『ライトつけて下さいね』とお声がけするとか、防犯カメラを設置するとか。人が増えても、安心してお買い物していただけるよう工夫しています。地元小学校の保護者有志が結成した防犯パトロール隊も回って下さっていますよ」。

街を愛する人々が街を盛り上げ、安心して暮らせる環境も自らつくる。その結果、より魅力的な街になる――。人情味ある好循環が、武蔵新城のにぎわいを生んでいる。

武蔵新城エリアはグルメの街でもある。商店街には小さな貸し店舗が多く、各地で修行した料理人が独立後に開業しやすいからだ。

たとえば、北口の商店街「新城北口はってん会」にある「パンと焼き菓子のPapapapa-n!2（ぱぱぱぱーんつー）」。ユニークな店名ながら、名店で修行を積んだシェフの作るパンは、どれも本格派。フランス産発酵バターを使用し、層の一枚一枚までパリパリに焼きあげたクロワッサンや琥珀色にブリュレされたクイニーアマン、鴨肉のサンドイッチなど、材料にもこだわった美味しいパンを求めて多くの人が足を運ぶ。「明るい雰囲気のお店にしたくて、この店名にしました（笑）。新丸子に1号店があり、2号店の物件を探して出会ったのが武蔵新城です。下町で温かい感じが印象的でしたね。こだわりの小さなお店が多い環境や、商店街がファミリーでにぎわっていて長く出店できそうなことからこの街に決めました」とシェフの神戸さん。

2020年に同店をオープンし、約3年。改めて武蔵新城エリアの良さを感じているそう。「近くに小学校があるんですが、子ども達が『町体験』の授業でお店に来て、その後お母さんと一緒にパンを買いに来てくれて。ハロウィンだったりお正月の獅子舞だったり、商店街のイベントも多く、地域のコミュニティが活発だと感じますね。武蔵小杉にも行きやすいし、等々力緑地や多摩川沿いも近くて、住みやすい街だと思います」。

「武蔵新城」駅南口にある「トラットリア ギヘイ」。シェフの飯田さんが中部イタリアでの修行を経て、2008年に地元・武蔵新城エリアにオープンした隠れ家レストランだ。「私が修行していた所は、予約が入ってから食材を畑に採りに行き、料理を仕上げていました。近い形を再現したくて市内に自家菜園を構え、朝採れの野菜や生みたての卵を使うようにしています」（シェフの飯田さん）。

イタリアの郷土料理をベースに地元産の新鮮な食材を使い、ソースひとつとっても手間を惜しまず丁寧に仕込まれる。同店はイタリア政府の公認を受けており、海外に駐在していた人が本場の味を懐かしんで訪れることもあるほどだ。こう聞くと敷居が高く感じるが、じつは「子ども連れ歓迎」なのだとか。「この辺りは子育て中のご家族が多いですが、小さいお子さんがいらっしゃると『都内のレストランに出かけて食事』はひと苦労ですよね。そういう方達にも気軽に食事を楽しんでいただきたくて。ベビーチェアも用意していますよ」。出産前からお店に通い、子どもと一緒に10年以上通うファンも少なくないそう。

気さくで居心地のよいお店の雰囲気は、どこか街のイメージとも通じるところが。「個人のお店が多いですからね。最近だと、若い方が商店街に出店して頑張っていますよ。チェーンにはない個性を持ったお店がたくさんあるので、自分なりのお気に入りを探せるのもこのエリアならではの魅力です」。