東京カンテイ 市場調査部 上席主任研究員
中山登志朗さん
出版社勤務を経て1998年より現職。不動産市況全般の調査・分析を担当、市況レポート『kantei eye』編集長。新聞、雑誌、テレビなどに数多くの原稿、コメントを提供
リクルート住宅総合研究所の実施した調査(※)によると、購入前に住んでいたのと同じエリアで物件を見つけた人は7割近く!やっぱり、住み慣れた場所、通勤・通学に便利な沿線は大きな魅力?でも「残りの3割」の人たちに注目したら、住まい選びがグンと広がるポイントが見えてきた!
※「2006年首都圏新築マンション契約者動向調査」(リクルート)より
実に7割の人がなじみのエリア内で物件を購入
リクルート総研が住まい購入者に行ったアンケートによると、「購入前の住所は?」の問いに、東京23区で69%、都下で68%、神奈川県70%、
埼玉県66%、千葉県74%の人が「同エリア」と回答しています。
しかし「購入の際に重視する項目」を尋ねると、「地縁のあるエリア」は28.2%で14位。それが、「購入の決め手項目」の問いでは9位に浮上しています。購入に際して、「同エリア」「同じ沿線」「地縁=コミュニティ」は、やはり無視できない重要な条件になってくるのでしょうか?
「こんな理由で同じエリアにしました」
- 自分の出身のところなので住みやすいから。(女性・36歳)
- 通勤や通園予定だった幼稚園、買い物エリアなど、今までと変わらない地区にしたかった。(男性・34歳)
- 住環境が良く、また子どもの学区の評判がよいことと、妻のママ友達がたくさんできたことから住環境を変えたくない、という思いがあり、近所(徒歩1分ほど)に建設中のマンションを購入することにした。(男性・28歳)
- 生活環境を変える必要がなかったから。(女性・43歳)
- 以前住んでいたエリアと同じになったのは、土地勘があり物件を探しやすかったからだと思います。(男性・37歳)
「でも、こんなデメリットも・・・」
- せっかく新居を買ったのに、あまり変化を感じない。(男性・36歳)
- 他の地域と比べることが必要だったかも。(男性・45歳)
- 地元なので、昔の会いたくない人に会ってしまう。(女性・31歳)
- 行動範囲が広がらない。(男性・44歳)
- 新鮮な気持ちにはなれない。(女性・42歳)
※リクルート住宅情報ナビ 2007年12月調査より
住まい選びは「家族が幸せになる器」選び
住まい購入の流れを考えると、まず予算があり、次に住みたいエリアを選び、そして絞り込んでいくわけですが、住みたいエリアを選ぶ理由はだいたい決まっています。イメージ、生活利便性、安心・安全、そして価格です。住まいを買うことは身軽に動ける賃貸とは異なり、そこで少なくとも10年、多くの場合はそれ以上長く暮らす「家族が幸せになる器」を買うということです。そう考えると、子どもの学校、医療、安全な地域性、近隣に住む家族・親戚、それまでに築いた近所づきあいなど、お金では買えないものについては、同じエリアで住まいを探すメリットが大きいですね。また絞り込みの段階で、周囲から地元の情報が入ってきやすいことも、同エリア内での購入に結びつく大きな理由ですね。
しかし、同じエリアに固執してしまうと、選択の幅が狭まってしまうのも事実。この条件の優先順位が高くない場合は、柔軟な発想で物件探しをしてみましょう。
地縁がなくても大丈夫! 残りの3割の人たちの物件探しとは?
「同エリア内での購入」が7割、ということは、残り3割の人たちは「エリア」という条件的な制約から自由だった、ということ。違うエリアで探し、決めた理由は何だったのでしょうか?
「こんな理由で他のエリアにしました」
- もともと住んでいたエリアの近所で探したかったのだが、予算オーバー。同じ沿線(2路線)が使える地域内で現在の住まいを選んだ。(女性・32歳)
- 以前住んでいたエリアの近所の物件を検討していたが、同じ沿線沿いで間取り、設備、環境ともにより条件に合う物件を見つけ、抽選で当たり、現在に至る。(男性・33歳)
- もともと別のエリアに住んでいたが、保育園の関係で、他のエリアを検討することになった。(女性・26歳)
- 共働きだったので会社の近く(都内)に住んでいたが、子どもができて退職したため、子育てにいい環境で両方の実家に近い場所(他県)に住み替えた。(女性・31歳)
- 東京23区のほうがいろいろと便利で有利であるから。以前のエリアは福祉に対してあまり良くなかったので・・・。(女性・36歳)
- もともとは他県に住んでいたが、子どもの中学受験を意識して現在の住まいを選んだ。(男性・47歳)
- 以前は別の市に住んでいた。もっと緑が多く、環境の良いところがよくて現在の市に引っ越しをした。(男性・32歳)
※リクルート住宅情報ナビ 2007年12月調査より
理想の住まいを追求するなら、エリアにこだわらずに情報収集
今はインターネットを駆使して情報収集できる時代です。マンションの評価サイトなどもありますから、間取りから施工会社、周辺環境までかなり詳細な情報を得ることができます。地元から入ってくる情報の代わりに、こういう手段で幅広いエリアの情報を得ることが可能な状況となっていますので、エリアを限定しなければ、物件の選択肢の幅を広げることができるでしょう。
ただし、インターネット上の情報だけをうのみにせず、自分でチェックすることが大事です。物件を絞り込んだら、必ず実際に現地に足を運んでみてください。それも時間帯、曜日、季節などを変えて自分の目で周囲の環境を確認することです。交通量、騒音、安全性など行ってみてわかることはたくさんあります。また、高齢者医療ケアや教育、保育などの行政サービスをチェックすることも大切です。
イラスト : トリゴエモトコ
