
住宅を巨大な消費財だと捉えると、お金のある人は金持ちそうな家を、ない人はそれなりの家を買うことになるわけですが、下馬のマンションの場合、事業用という使い方ができる。そういう用途はこれからもっと重要になってくると僕は思っているんですが、その部分についてはあまり評判になりませんでしたね(笑)」
そういって苦笑いする北山さんだが、時代の動きのなかで集合住宅の設計依頼の割合が多くなっているという。会社を辞めて独立する人が増えたり、パソコンの普及で家に仕事を持ち帰ることが珍しくなくなった昨今、ホームオフィスという発想は定着してきたものの、現実的にプライベートとオフィスを使い分けできる集合住宅の供給はまだまだ少ない。北山さんの人気は、そのニーズの高さと比例しているのかもしれない。だがもちろん、来た依頼をすべて受けるわけにはいかない。
「どんな小さな仕事も、やるからには真剣にやるので、受ける数はどうしても限られてきます。学校や病院といった公共施設のコンペにも積極的に参加するようにしているので、そのぶん小さな住宅などは減らさざるをえなくて……。今後はもっと、社会に関わる仕事を増やしていきたいと思っているんです。住宅が生活に密着しているとしたら、公共施設は社会に密接している。例えば学校は、次の世代を担う子どもたちの成長に非常に重要な場所なのに、学校建築はすごく遅れています。ああいう環境じゃあ、子どもたちによくないというのがよく分かりますよ。カリキュラムを見直すといったソフトウエアの変革も大事ですけど、建築という受け皿、つまりハードウエアを変えていくことも同じくらい重要だと思っています」
公共施設は行政の管理下のため、平等主義・前例主義が慣例化している。その分厚い壁を打ち破るのは並大抵のことではない。
「公共建築というのはつまり、社会のシステムをつくるものです。今後はもっと、それぞれの市や町に合った、固有性そして多様性のある施設をつくっていくことが、人々の幸せにつながり、やがては社会のためになるはずです。もうひとつ付け加えて言うと、日本人はもっと公共の利益について真剣に考えたほうがいい。例えば、公共公園の隣に高層マンションが建って、そこから見える景観をマンションの住人が独占していることについて周りが何も言わないのはおかしいんです。本来、公園などの景観は税金を払っている社会全体のものですから。これがヨーロッパだったら、周りの住民はきっと黙ってはいないでしょう。そういうことも含めて、土地を買って建物を建てる人は、その地域社会に迷惑をかけず、むしろ贈り物になるような建築物をつくるという感覚を持ってほしいですね。そんな動きが少しずつでも出てくれば、賛同した人たちの間で広まっていくでしょうし、街全体、都市全体の景観もよりよくなっていくと思います」
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