
でもひとつくらいは、建築上、実現可能なものがあるんです。まずはそのことについて、とことん突き詰めて考えるんですね。この仕事をやっていて何が面白いかというと、普通に考えて当たり前にできることを超えて、今までありそうでなかったものを形にするということなんです。そのうえで、住むほどにその家のことが好きになる、10年後も住人に愛されるような家にするために、その建物の本質を真剣に考え抜くことが、私たちにとっては何よりも大切なことなんですね」
例えば一昨年手がけた「メガホンハウス」。9m×6mの、海に面した大きな窓に向かってメガホンのように広がる空間は、側面にしか壁がない。そのぶんクライアントは、大海原に浮かんでいるかのような錯覚に陥るほどの絶景を、大きな窓から満喫できる。
あるいは、風を感じる家をスタートにして、バルコニーを思いつき、“バルコニーとは何か? ”についてとことん突き詰めて考えて設計したのが「バルコニーの家」。家全体がバルコニーになっているため、正面に柱はなく宙に浮いている。
窓が壁代わりだったり、宙に浮いていたり……。そんな一見するとシンプルでいて、よく見ると今までできそうでできなかった、ありそうでなかったデザインが手塚流だが、その実、それらの建物の構造には、並々ならぬ技術や工夫が施されているという。
「もともと空港など大きい建物の設計からスタートしているので、構造についてはものすごく興味があるんです。ただ、頭で理解はできて計算くらいまではするけれども、いざ形にするとなるとそれ以上はできない。そこでどうしても不可欠になってくるのがプロフェッショナルの存在なんです。いろんなことを知識として理解はしていても、自分の能力を超え、時代を超えて最終的に残る建物をつくるためには、構造や照明、音響といったそれぞれのジャンルのプロフェッショナルのバックアップがとても重要になってきます」
そんなお二人が、今もし自由に集合住宅を設計できるとしたら、どんなものをつくりたいのだろうか?
「超高層マンションはやってみたいですね。そのときはまず、都市のダイアグラムを考えることが先決になります。集合住宅の場合、形の議論に終始しがちですけど、もしやるとしたら、都市のダイアグラムや建物の中身も含めて最後までやりたい。高層マンションこそ、今までの技術ではできないと思われていることがまだまだたくさんあって、当たり前の空間が大量につくられているので、だからこそやりがいがあると思います。大きな規模になればなるほど、夢をかたちにするためにどんなテクノロジーが必要なのか、構造だけでなく空間や光、風にいたるデザインまで、今までのやり方を超えていくためにはどうすればいいのかということをきちんと理解し、各分野のプロフェッショナルとどれだけいいチームを組めるかということが重要になってくると思う。常識では実現不可能だと思われていたことをいかに壊して、より高度で時代を超えた建築をつくっていくかということが常に私たちのテーマですね」
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