現地見学をする時には、おそらくリビングの広さや日当たりのよさ、収納などを重点的に見る人が多いはず。ただし、ぼんやりと見るだけじゃダメ。ポイントを絞って見学したい。
そこで3人のプロがハウスソムリエとして、アドバイスしてくれた。例えば、快適な空間にこだわるならどこを見たらいいのか。子育て中、または子育て予定ならどんな点を重視したらいいのか。そして共働きなどで家事ラクラクの家が希望ならどこを見るか。そこにはプロならではの目線がある。それぞれのアドバイスを参考にして、早速現地見学へ出かけてはどうだろうか。
家族の変化に対応する可変性があるかをチェック
快適なリビングかどうかを見分けるポイントは、「レイアウトを2、3パターン変えられるかどうか、可変性と言い換えてもいいでしょう」と佐川旭さんは強調する。一体、どういうことなのか。「家族は成長するし、好みの変化もある。そうした変化に対応できるのが、ゆとりある空間です。そこに明るい光が差し込み、気持ちのよい風が通ればベストです」(佐川さん)。現地では広さはもちろん、レイアウトしやすい形か、また天井高も圧迫感がないか確認したいとアドバイスする。
具体的にはダイニングテーブルとソファのレイアウトを2、3パターン考えられるといい。そのためには少し長方形のリビングのほうが使いやすく、家具等を付けられる壁も一定量欲しいという。「新居での生活スタイルをきちんと思い浮かべてリビングを考えましょう」
比較的簡単に日当たりをチェックする方法がある。日頃から床面に対して約35度の角度を感覚的に身に付けておくことだ。「真冬の日差しは床に対して35度が目安。一戸建てなら庇(ひさし)から、マンションなら上階バルコニーの先端から35度をイメージ、その辺りまで日差しが届きます」
複数の窓があれば風の出入り口ができ、湿気を防ぐので快適で健康的な空間になる。しかし、一戸建てはともかく、マンションでは角部屋でない限り、なかなか難しい。「玄関ドアや外廊下側の窓や雨戸にスリットなどで風が抜けるよう工夫されているかがポイントです」
「リビングに限らず、快適な空間には適切な収納が不可欠です」。ここで重要なポイントは”適切な”という部分。リビングの収納には、新聞や雑誌、子どものおもちゃをしまうことが多い。したがって大型の収納ではなく、ちょっとした収納で十分というわけだ。
構造上の出っ張りを確認する
マンションに付きものなのは柱や梁など、構造上の出っ張りだ。これが結構やっかいで、下の階ほど太く、大きいのが基本。「思ったよりも圧迫感を感じる大きさだったり、背の高い家具が置きにくかったりするので、実際に確かめてください」。収納や洗面室、トイレにも出ているケースも。
多彩な窓で快適度アップ
「リビングに限らず、快適な空間には適切な収納が不可欠です」。ここで重要なポイントは”適切な”という部分。リビングの収納には、新聞や雑誌、子どものおもちゃをしまうことが多い。したがって大型の収納ではなく、ちょっとした収納で十分というわけだ。
コミュニケーションがとりやすいかをチェック
「子育てがしやすい=ママにストレスがたまらない家ですね」と藤田洋さん。そのためには家族のコミュニケーションが最も大切なのだという。具体的には家族が集まりやすい快適なリビング、そして家族の気配がいつでも感じられる家がいいという。例えば、いつでも会話が弾むようなLDKや帰宅したら家族が顔を合わせやすいプランだ。もうひとつは安全への配慮。「子どもは家の中でケガをしやすい。ケガをするとママにストレスがたまりやすくなります」(藤田さん)
子ども部屋が快適だと閉じこもりがちになることが多いといわれる。「特に子どもが小さいうちは、リビングを居心地のよい空間にする工夫をして家族が自然と集まる環境をつくってあげましょう」。広くてテレビなどを備えた立派な子ども部屋をあえて求めないという考え方もある。
「日常的なコミュニケーションをとるには、リビングを通って個室へ行くパターンが望ましいですね」。一戸建てではリビングインの階段ならいつも顔を合わせられるし、お互いの体調などもつかみやすい。マンションでもリビングを通って居室へ行くプランがある。
子育て中は汚れ落とし専用の洗い場があると快適だという。「子どもはいろいろ汚すものだからです。汚れた運動靴を家族が使う洗面所では洗いにくいですからね」。一戸建てでは外に水道栓があることが多いが、マンションならバルコニーにスロップシンクがあるといいだろう。
小さな子どもがいる家庭なら、子どもがけがをしにくいような工夫も重要なポイント。「見逃しがちなのは2、3cmの小さな段差。また建具などの角が丸みを帯びていれば、ぶつかってケガをするケースも減ります」。洗面室と浴室を含めて段差が家の中にないか、安全性を確認しよう。
床・壁の遮音性能は大丈夫か
子どもが跳びはねて叱ってばかりでは、親子ともどもストレスがたまる。上階からの影響、下階への配慮を考えると遮音性能は重要になる。「特に床の遮音性能は軽量衝撃音LL40、重量衝撃音LH45は欲しいですね」。新築ならパンフレットなどにも明記されているので簡単に判断できる。
階段の安全性は念入りに
一戸建てならではの安全面の確認ポイントが階段。「角度が急すぎないか、踏み面の奥行きが短すぎないか、滑り止めや手すりがついているか、万が一転落したときのための踊り場があるかなどは見ておきましょう」。大人なら問題ない場所も、子どもには危険な場所になりかねないのだ。
広く見渡せる間取りかをチェック
「エンドレスで続く家事の基本は、”ながら”です」と高橋ゆきさん。食器を洗いながら、アイロンをかけながら、子どもと話をしたり、見守ったりできると家事が効率的になるという。そして家事動線。キッチン、洗面室など頻繁に行く場所はできる限り短い線で結ばれているとラク。もうひとつは換気しやすいかどうか。家事で最も手がかかり、気が重いのはカビ対策だという。「湿気がなければ良好な空気環境を維持でき、家族の健康にもつながります」(高橋さん)
「”ながら家事”のためには、見晴らしのいい家、見えなくても気配が感じられ、会話ができる家がいいですね」。例えば家事の基点のひとつ、キッチンからの見通しはどうかを確認しよう。ダイニングテーブルからも同様だ。なるべく仕切りが少ないほうが「家事ラク」の家だという。
湿気やカビは家の大敵。「カビを落とすだけで体力を消耗し、きれいな環境を維持しようという家事意欲が減退します」。そこでいかに換気しやすいつくりかを見る。水まわりの窓の位置や大きさがポイント。マンションでは浴室に窓がないことが多いので、換気乾燥機があるといいだろう。
家事でもっとも移動が多いのは水まわりの行ったり来たりだという。水まわりどうしが近いと、それだけで家事がラクになるわけだ。「また近いだけでなく、複数の動線があるとなおいいでしょう。キッチンや洗面室に2通りのアクセスができれば、途中から近道ができたり快適です」
子どもがいると床や壁を汚すことが多い。その掃除も家事のひとつ。「できるだけ汚れを落としやすく、キズが付きにくいフローリングや壁紙を使っているとラクです。必要以上に子どもを叱らずにすむことも大きいですね」。見学時に確認してみるといいだろう。
布団をちゃんとしまえるか
マンションでは布団をしまうスペースがないこともある。「普段はともかく、親や友人など来客があるなら、布団の収納は必要になります。忘れずに確認しましょう。そのとき、上げ下げがしやすいかどうか、実際に再現してみるといいですね」。収納の間口が狭くて入りにくいことも。
デッドスペースを見逃すな!
家の中に使いにくい場所があると、散らかりがちになって掃除を繰り返さなければならない。「それは結果的に家事意欲を減退させます。特に一戸建ては階段下などにデッドゾーンができやすいので、チェックしてみましょう」。写真のように階段下などを収納に有効活用していればグッドだ。