不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

決め手は何? 住んでいない家は売る(売却)VS貸す(賃貸)

決め手は何? 売るVS貸す

新しいマイホームに住み替えたり、相続したりで、住まなくなった住宅ができたとき、売るのがいいのか、貸すのがいいのか? 何を決め手に決めればよいのか、プロに聞いてみた。

売るか貸すか、決め手は

Step1 所有者の意向を確認

所有者全員で目的を明確にしておこう

売るのと貸すのとでは、家を手放すのか持ち続けるのか、売って現金化するのか賃貸収入を得るのか、といった違いがある。つまり、所有者の意向によって選択が分かれるわけだ。
注意したいのは、家を貸すことだけが賃貸収入を得る方法ではない点。

「積極的に不動産投資をしたい場合、所有物件を貸すだけでなく、売却して現金化し、より投資に向いている不動産を購入するという選択肢もあります」(久谷真理子さん)

郊外の一戸建ての場合、それほど高い賃料収入が得られないことも多い。きちんと投資を考えるなら、駅近の共同住宅に買い替えることなども選択肢になる。

所有者の意向で売るか貸すかが分かれる

【売るほうが向いている場合】

  • 維持するのが面倒なので手放したい
  • 資産は金融商品や保険で運用したい

【貸すほうが向いている場合】

  • 家に思い入れがあり、手放したくない
  • 実家に将来住む予定がある
  • 不動産収入(賃料)を得たい
所有者全員で目的を明確にしておこう

売るか貸すか、決め手は

Step2 収支を計算する

10年程度の期間でそれぞれの収支を比較

次に、それぞれの収支を計算しよう。それにはまず、不動産会社に売却価格と賃料の査定を依頼する必要がある。できれば、10年程度の長期的なレンジで、後で説明する「所得税や住民税も含めて試算」したい。税務署や無料の税務相談などで税額を確認する方法もある。

●売ったときは?

まず、売ったときに売却代金が入ってくる。一方で、仲介手数料をはじめとした支出もある。売却して利益が出れば譲渡所得に対して税金がかかるが、居住用の不動産なら3000万円特別控除※が使えるので、実際に課税されるケースは多くはないだろう。

※居住用財産(不動産)を譲渡して得た譲渡所得から3000万円まで控除できる特例

売るときにかかるお金

  • 不動産会社に支払う仲介手数料
  • 売買契約書の印紙税等の諸費用(ローンが残っているときなどの抵当権抹消費用もかかる)
  • その他不用品の処分費用など
  • 譲渡所得にかかる税金

※一戸建ての場合は、測量費用や建物の解体費用がかかる場合もある

●貸したときは?

貸す場合は、入居者からの礼金や賃料・共益費が入ってくるが、支出も多い。賃料がそのまま収入になるわけではないので、甘く考えるのは危険。そのまま貸すわけにもいかないので、リフォーム費用で初年度は赤字になるといったことも。
さらに、仕事をもちながら不動産事業をする人の場合は、給与所得などに不動産所得が加わるため、税率が上がってしまい、納める税金が想定以上に増える場合もある。また「敷金や礼金をゼロゼロにする場合、入居時のハードルが低い分、更新時に退去する可能性も高くなる傾向があります。その際の募集でリフォーム費用や仲介手数料などがかさみ、利益が想定したより少ないということもあります」(久谷さん)

貸すときにかかるお金

1.初期費用

  • リフォーム費用

2.維持運用費用

  • 固定資産税・都市計画税
  • 修繕費用(建物や設備の修繕費用。マンションの場合は管理費も必要)
  • その他保険料や通信費など

3.不動産会社に払う費用

  • 入居者募集にかかる仲介手数料など(借主が全額負担する場合もある)
  • 入居者管理や建物管理を委託する場合の管理委託料

4.不動産所得にかかる税金

貸すときに入るお金

(賃料・共益費 × 12カ月 × 10年間)+(礼金・更新料×頻度)

所得税の速算表

所得税の速算表

【まとめ】パートナー選びも重要

売るか貸すかは、それぞれの収支だけでなく、自分たちの意向も明確にしておくことが大切。売ってしまうと再利用はできないし、貸す以上は大家業をする覚悟も必要。いずれにせよ、適切な助言をしてくれる不動産会社を選ぶことが、大きなカギになるだろう。

【アドバイスしてくれた専門家】
久谷真理子さん

フリーダムリンク専務取締役
相続・不動産にかかわる相談業務および、実行支援業務を行う、ファイナンシャル・プランナー

2016年3月16日 SUUMOマガジン仙台版より転載
構成・取材・文/山本久美子 イラスト/木村吉見

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