不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

不動産鑑定とは?不動産査定との違いは?不動産鑑定の方法・費用・必要書類・流れを専門家が解説

【専門家に聞く】不動産鑑定と不動産査定の違いは? 費用についても知りたい!

不動産鑑定や不動産査定、聞いたことはある言葉だけど、その違いはよく分からないという人も多いでしょう。
家を売りたい、相続のために家の価値を知りたい、そんなときにはどちらを利用すればいいのでしょう。
ここでは不動産鑑定と不動産査定、それぞれについて解説。
不動産鑑定については、不動産鑑定士の藤田絵理子さんに伺いました。

不動産鑑定と不動産査定、それぞれの内容は?

不動産鑑定とは何か

まずは、不動産鑑定と不動産査定がそれぞれどのようなもので、どんな違いがあるのかを簡単に説明していきましょう。

「不動産鑑定とは、土地や建物などの不動産の適正な地価、価格などを判断することです。
この不動産鑑定評価は『不動産の鑑定評価に関する法律』に基づいて不動産鑑定士だけが行えるものです。
不動産鑑定で評価されるのは、地価公示や地価調査、相続税路線価評価、固定資産税評価など公的なもの。
そのほか、個人や法人が所有している不動産も対象です」(藤田さん、以下同)

不動産査定とは何か

一方、不動産査定は不動産会社等が算出する「売却できそうな価格」のこと。
不動産会社が独自に算出したり、不動産鑑定士に依頼して算出したりします。そのため、依頼先によって金額に多少の違いが出ることがあります。

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不動産鑑定と不動産査定イメージ

不動産鑑定が必要なのはどんなとき?

鑑定できるのは不動産鑑定士の資格をもつ人

不動産の鑑定評価を行うことができるのは、国家資格である不動産鑑定士試験のすべてに合格して国土交通大臣への登録を受けた「不動産鑑定士」か、不動産鑑定士試験の一部に合格して国土交通大臣への登録を受けた不動産鑑定士補です。

不動産鑑定士は公示地価や地価調査の土地の評価にかかわる

不動産鑑定士の仕事には、大きく分けて下の表のように「公的評価」と「民間評価」があります。

公的評価とは、国や都道府県、市町村などが土地の適正価格を公表するために行う地価公示や地価調査、相続税や固定資産税の課税のための評価です。

民間評価とは、民間企業や個人などから依頼される評価業務のことです。
不動産の売買や賃貸借で取引価格を決める際の参考にするために依頼したり、所有している不動産の価値評価を依頼したりといったケースのほか、金融機関が不動産を担保にする際、その価値を自ら評価するだけでなく、より正確性を求めて不動産鑑定士に依頼することがあります。

■不動産鑑定士がかかわる不動産の鑑定評価
公的評価
地価公示 地価公示法に基づく標準地の鑑定評価。地価公示は、毎年1月1日時点の、土地の正常価格(更地としての価格)が、公示価格としてその年の3月下旬ごろに国(国土交通省)から公表されるもの
地価調査 国土利用計画法に基づく基準地の鑑定評価。毎年7月1日時点の、土地の正常価格(更地としての価格)が、基準地標準価格としてその年の9月下旬ごろに都道府県から公表される
相続税路線価評価 相続税や贈与税の根拠とするための相続税標準地の鑑定評価。国税庁が毎年1月1日時点での土地の正常価格を基にした価格が、毎年7月上旬ごろに公表される
固定資産税標準地評価 固定資産税の根拠となる固定資産税標準宅地の鑑定評価。市町村が3年ごとに1月1日時点での正常価格を基にした価格が、基準年の3月ごろに公表される
民間評価
売買や賃貸借のための評価 売買や賃貸借で取引価格(賃料)の参考とするための評価
資産評価 依頼人が保有している家や土地などの不動産の価値の評価
担保評価 金融機関等が担保とした不動産の価値と比較するための評価

個人で不動産鑑定を依頼するのはどんなとき?

個人が不動産鑑定を利用するのは、一般的には不動産の売買や相続、贈与、財産分与などの場合が考えられます。

例えば、親子やきょうだい、親族間で家や土地を売買することになったとき、適正な価格よりも極端に低い金額で売ると、贈与税の課税対象になる場合があります。
逆に、高値で売った場合、あとで家族間、親族間のトラブルになることも。客観的で適正な価格を不動産鑑定評価によって出すことによって、これらを防ぐ効果が期待できます。

また、離婚や生前贈与で財産を分与するときや、相続財産を複数の相続人で分割する際など、適正な不動産価格をもとにしたほうがよい場合もあります。

そのほか、相続財産に広い土地がある場合、不動産鑑定を行うことで節税になるケースがあります。
相続税が算出されるもとになる相続税路線価評価額が、相続税法で定義されている「時価」よりも高く評価されているために、相続税が高くなることが。
不動産鑑定による時価価格である評価額を、相続税路線価評価と併用して申告することで、節税につなげられる場合もあるのです。
節税可能かどうかはケースバイケースですから、相続に強い税理士や、不動産鑑定士に相談してみるといいでしょう。

■不動産鑑定を依頼するメリット

適正な不動産価格が明確になる
      ↓
・遺産相続の際に平等に分けることができる
・売買の際、高すぎる、安すぎることによるトラブルを防げる
・相続税路線価評価が時価価格よりも大きい場合、不動産鑑定評価を併用することで節税ができることがある

不動産鑑定の方法と項目

「不動産鑑定評価には『取引事例比較法』『収益還元法』『原価法』の3つの方法があります。
不動産鑑定士はこれらの方法を組み合わせることによって、より精密に不動産の資産価値を算出します。
どの方法をベースにするか等の細かな評価法は、土地であれば更地なのか貸していて収益をあげている土地なのか、建物であれば居住用の持ち家なのか、賃貸物件なのかなど、不動産の種類によって違ってきます」

■不動産鑑定の方法は大きく分けて3つ

不動産鑑定の方法は大きく分けて3つ

取引事例比較法とは

取引事例比較法とは、面積や立地、地域などその不動産と同じような条件の不動産がどのような価格で取引されているかを比較しながら、市場全体の動きや取引の時期なども加味しながら調整を行い、資産価値を算出するものです。
不動産の査定を行う際の基本的な方法といえます。

収益還元法とは

収益還元法とは、その不動産が将来生み出すと予測される純利益と現在の価値から収益価格を出し、査定価格を算出する方法。
アパートなど賃貸用不動産や、貸店舗や貸し倉庫など事業用不動産の価格を知りたい場合に有効といえます。
収益価格は、通常、1年間の純利益を還元利回り(表面利回り)で割って算出する直接還元法と、直接還元法よりもさらに複雑な計算で収益価格を出すDCF法があります。

原価法とは

原価法とは、その不動産を再度建築した場合の原価を出し、建築年数が経過したことによる価値のマイナス分を加味して原価を修正したうえで現在の資産価値を出す方法です。

不動産鑑定ではどんな項目が鑑定材料になるのか

不動産鑑定評価では、主に「一般的要因」「地域要因」「個別的要因」の3つが評価に影響します。
それぞれ、どのようなものかを見ていきましょう。

一般的要因とは

一般の経済社会で、不動産の使われ方や価格水準に影響を与える要因のことをいいます。例えば、その不動産がどんな立地にあるのか、気象条件や地盤はどうなのか、土地の利用に関する法的な規制はどうなっているかなど、下の表のような幅広い項目が影響します。

地域要因とは

大きく「宅地地域(住宅地域、商業地域)」「工業地域」「農地地域」「林地地域」に分けた地域で、下の表のようなさまざまな要因が不動産価格に影響します。

個別的要因とは

その不動産に、個別性を生じさせて、それが価格に影響する要因で、土地と建物に分けて考慮されます。

■不動産の価格に影響する主な要因
一般的要因 ・自然的要因(地質や地盤の状態、地理的位置関係、気象の状態など)
・社会的要因(人口の状態、不動産の取引や使用収益の慣行、情報化の進展の状態など)
・経済的要因(物価、賃金など企業活動の状態、税負担の状態、交通体系の状態など)
・行政的要因(土地利用に関する計画及び規制の状態、土地及び建築物の構造、防災等に関する規制の状態、不動産に関する税制の状態など)
地域要因 ・住宅地域(都心との距離や交通の利便性、災害発生の危険性、土地利用に関する規制及び規制の状態など)
・商業地域(住宅地域に掲げられる要因のほか、商業施設などの種類や規模、にぎわい度など)
・工業地域(住宅地域に掲げられる要因のほか、幹線道路や鉄道など輸送施設の整備状況、関連産業との位置関係など)
・農地地域(日照や温度などの気象状況、起伏や高低などの地勢の状態、集落との位置関係など)
・林地地域(日照や温度などの気象状況、標高や地勢等の状態、林道等の整備の状態など)
個別的要因 ・土地(宅地)(地勢、地質、地盤、接道状況、交通施設や商業施設との距離、隣接不動産等周囲の状況)
・建物(築年数、面積、高さ、構造、材質、耐震性、耐火性、賃貸の場合は借主の状況や貸室の稼働状況など)
国土交通省:不動産鑑定基準より抜粋
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不動産鑑定を依頼する流れを知っておこう。気になる費用、期間についても解説

不動産鑑定士の探し方

不動産鑑定士に土地や建物の鑑定を依頼する場合、依頼先はどうやって探すのがいいのでしょう。

「鑑定してもらう不動産のあるエリアの不動産鑑定士の場合はその地域の事情に精通していることもあり、より公正な評価が期待できます。
また、自分が住んでいるエリアの不動産鑑定士なら打ち合わせがしやすいというメリットがあります。
各都道府県の不動産鑑定士協会のホームページからエリアごとの鑑定士を探せますし、直接電話などで問い合わせてもいいでしょう。
不動産鑑定士にも、一般住宅の鑑定が得意な人、収益物件が得意な人など、得意分野があります。問い合わせの際に、どのような目的で依頼していのかを伝えるといいですね」

不動産鑑定士への依頼から鑑定までの流れ

不動産鑑定を依頼してから鑑定が完了するまでは、どのような流れなのでしょうか?

まずは、どんな不動産をどのような目的で鑑定してもらいたいのかを伝えたうえで、料金の見積もりをしてもらいます。 多くの不動産鑑定事務所の場合、見積もりは無料です。

依頼内容や不動産の内容によって料金や鑑定方法が明確になったら「依頼書兼承諾書」を交わします。

その後、現地での調査(簡易的な鑑定の場合は現地調査は行われない場合もあります)、鑑定評価書の作成が行われます。

不動産鑑定士に問い合わせ
何のために、どんな不動産の鑑定を依頼するかを伝えて費用を相談。
依頼内容等を明確にした「依頼書兼承諾書」を作成
  ▽
実地調査
不動産鑑定士が対象不動産を調査
  ▽
鑑定評価書の作成
調査結果に基づき、不動産鑑定評価基準の手順に沿って、不動産鑑定評価書を作成し納品

不動産鑑定に必要な書類一覧

不動産鑑定を依頼する際には、どのような書類が必要になるのでしょうか。
「ご相談いただく段階で、その不動産の所有者や、抵当権などの所有権以外の権利の現況が分かる登記簿謄本(全部事項証明書)や住宅地図等をご用意いただくといいでしょう」

そのほか、必要な書類は相談内容や依頼内容によって違ってきます。どんな書類を用意すればいいのか、最初に相談する際に確認しておきましょう。

■不動産鑑定の際に必要になる書類の例 ※物件の種類や依頼内容によって必要書類は異なります
・登記簿謄本(全部事項証明書)
・公図、地積測量図、実測図
・住宅地図
・固定資産評価証明書(固定資産税・都市計画税)
・賃貸借契約書、覚書
・建物竣工図・建物図面
・管理規約・細則・建物館内規則
・建築確認通知書・検査済証
・売買契約書
・重要事項説明書・物件概要書・物件パンフレット

不動産鑑定の費用はどう決まる?

「多くの不動産鑑定事務所では、国が用地買収を行うときなどの報酬基準になる『基本鑑定報酬額表』をもとに、独自の基準を設けて鑑定費用を設定しています。
そのため、どの鑑定事務所に依頼するかによって違いますし、対象不動産の評価額や内容、状況などによって違ってきます。
所有権が複雑だったり、借地権が付いていたり、ひとつの土地に更地や貸家建付地などが混じっていたり、調査に手間がかかる不動産は料金も上がります。
一概にいくらとは言えませんから、鑑定を依頼する際に見積もりを出してもらいましょう」

■不動産鑑定報酬の基準に用いられる中央用地対策連絡協議会の「基本鑑定報酬額表」(抜粋)
評価額 宅地または建物の所有権 自用の建物及びその敷地の所有権
500万円まで 16万1000円 21万円
1000万円まで 16万1000円 23万6000円
1500万円まで 17万4000円 27万5000円
2000万円まで 18万1000円 27万7000円
2500万円まで 19万9000円 30万1000円
3000万円まで 21万1000円 32万5000円
4000万円まで 22万9000円 36万2000円
5000万円まで 25万3000円 39万8000円
6000万円まで 27万7000円 42万2000円
8000万円まで 31万3000円 45万8000円
1億円まで 35万1000円 49万6000円

不動産鑑定にかかる調査期間はどれくらい?

不動産鑑定にかかる期間は、不動産鑑定事務所によって、また、依頼件数の状況によっても違ってきます。

「依頼が立て込んでおらず、対象不動産が権利関係などが複雑ではないシンプルなケースでは、相談の受け付けから不動産鑑定評価書の納品まで1~2週間で完了するのが目安です」

簡易鑑定とは

不動産鑑定には、「不動産の鑑定評価に関する法律」「不動産鑑定評価基準」に基づいて調査を行い、不動産鑑定評価書を発行する「一般鑑定」と、その簡易版の「簡易鑑定」があります。

一般鑑定は、対外的に正式な書類が必要な場合などに適しています。

「簡易鑑定の場合は、正式な書類を必要としておらず自分の土地や家などのだいたいの価値を知りたいといったケースや、費用を抑えたい場合に適しています。
発行されるのは、一般鑑定で使われる不動産鑑定評価基準を省略した『不動産調査報告書』です。調査に必要な期間はそれほど変わりませんが、費用は半額程度になることが多いでしょう」

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不動産査定とは何か。かかる費用と期間は?

不動産の売却価格を調べるときは不動産査定を依頼する

自宅の売却をしたり、買い替えを考えている際に、住宅がいくらで売れそうかを知るために利用するのが不動産査定です。
不動産鑑定の場合は国家資格をもつ不動産鑑定士が行わなければなりませんが、不動産査定にはそのルールはありません。
一般的には、不動産売買のプロである不動産会社が直近の同じエリアでの成約事例を参考に、不動産の規模(土地面積や建物面積)や築年数、形状、駅からの距離、周辺環境などさまざまな条件を加味して算出します。 算出の根拠は不動産会社や物件によって異なります。
不動産鑑定で使われる取引事例比較法、原価法、収益還元法のうち、個人の住宅の売却のための査定では取引事例比較法や原価法が使われます。

不動産査定には費用がかからない

不動産査定は無料で行われるのが一般的です。 これは、不動産の価格評価を報酬を受けて行えるのは不動産鑑定士だけという法律上の決まりがあるから。
不動産査定の場合、不動産会社が独自に行うことがほとんどなので無料、ということになるのです。

不動産査定の方法は?

不動産査定には大きく分けて「簡易査定」と「訪問査定」があります。それぞれの方法について知っておきましょう。

簡易査定とは

不動産会社の担当者が実際の不動産を見ずに概算の価格を出すのが簡易査定です。
不動産会社の事務所から出ずに机上でできることから机上査定とも呼ばれています。

では、どのような方法で行われるのでしょうか。

簡易査定は電話やメール、インターネットからの申し込みを受けた不動産会社が、その物件の立地や、土地であれば広さ、建物なら築年数や広さ、方角、さらにマンションなら何階建てかといった規模を調べて査定価格を出します。

実際に現地を見るわけではないので、周辺環境や交通の利便性、買い物施設や医療機関、公共施設はあるか、子育てしやすい環境かなどの生活環境は考慮されません。
そのため査定で出されるのはおおよその価格。
特に、一戸建ての場合は完成してから今まで、どのようなメンテナンスがされてきたかによって状態が大きく違います。
簡易査定では、適正な売却価格を出すのはなかなか難しいといえるでしょう。
マンションの場合は、立地や築年数、広さなどが似た物件の売買事例が多くあれば、比較的精度の高い結果が出やすいといえます。

訪問査定とは

不動産会社は簡易査定と同様の机上での条件を確認するほか、権利関係や法令上の制限なども調べたうえで実際に現地に足を運んで査定を行うのが訪問査定です。

土地の状態や、建物の劣化の状態やどんな付帯設備が付いているか、駅から現地までのルートに交通量が多く渡りにくい道路はないか、周辺の公園の状況や買い物施設や病院の充実度など、詳細な調査が行われます。

■住宅の訪問査定でチェックされる主な項目
最寄駅までの距離 物件から駅までの最短ルートは不動産査定では大切なポイント。駅からバス便の場合は、バスの本数や所要時間なども重要
築年数 完成からの経過年数が短いほどプラス評価となる
建物のグレード 外壁材、内装材、窓、設備など建物全体と付帯設備がチェックされる
方角・日当たりなど 土地や建物の向きや、マンションであれば角部屋か中住戸か。一般に南向きや角住戸は評価が高くなる。ただし、南側に高い建物があり日当たりに影響する場合は、その点が考慮される
メンテナンス・管理 建物や室内、住宅設備に必要な手入れや交換がされているか、マンションであれば大規模修繕が計画的に行われているか、管理状態、管理人が常駐か巡回かなどがチェックされる
生活環境 スーパーやコンビニ、病院、公共施設などが利用しやすい立地にあるか。騒音や夜間の雰囲気はどうかなども査定に影響する

このほかにも、リフォーム履歴や間取り、修繕が必要かどうかなど、さまざまな点が査定され、査定価格が出されます。

査定結果のイメージ

訪問査定で用意しておく書類

訪問査定では、収納スペースの中や水まわりの状態など、すべての空間をチェックされると思って、心づもりをしておきましょう。
売却の理由やローンの残債の有無、希望売却額、退去可能な時期、買い替えかどうかなども答えられるようにしておきましょう。

また、査定に必要な書類を事前に用意しておくとスムーズです。

■訪問査定前に用意しておくとよい書類
・物件の図面
・リフォームをした場合は、その際の資料一式
・マンションの場合は管理規約や修繕履歴

不動産査定には必要な期間は?

不動産会社によりますが、簡易査定の場合は当日~翌日に結果を教えてもらえるのが一般的。訪問査定の場合は、登記簿謄本(登記事項証明書)で物件の権利がどうなっているかを確認したり、土地の場合は用途地域や容積率、建ぺい率、そのほか法令上の制限を確認したりするため、簡易査定に比べて日数がかかります。結果が出るまで1週間程度と考えておくといいでしょう。

簡易査定と訪問査定、どちらを依頼する?

簡易査定にも訪問査定にも、それぞれにメリットがあります。不動産査定を依頼するなら、自分の状況に合った査定方法で依頼するといいでしょう。

売却時期が未定なら、簡易査定がオススメ。
不動産の価格は世の中の経済状況やニーズ、近隣での売り出し状況などに左右されます。
今、売却できそうな価格を出してもらっても、実際に売り出すときには状況が変わっているかもしれません。
まずは簡易査定で、おおまかな物件の相場価格を知るといいでしょう。
簡易査定なら、自宅に不動産会社の人が来ることがないので、あわてて掃除をしたり、仕事を休んだりする必要もなく気軽です。

すでに売却を決意していて、査定後はすぐに売却を依頼するなら、はじめから訪問査定を依頼するのがいいでしょう。
訪問査定は結果が出るまでに数日かかりますが、売却できる実際の価格により近い精度の高い査定が期待できますし、不動産会社の担当者に会うことで、その会社の対応や市場の状況に詳しいか、自分との相性はどうかなども確認することができます。

■簡易査定と訪問査定、それぞれのメリット
簡易査定 ・物件のおおまかな相場価格を知ることができる
・結果をスピーディーに知ることができる
・不動産会社の人が来るわけではないので、気軽に依頼できる
・無料で査定してもらえる
訪問査定 ・簡易査定よりも実際に近い相場価格を知ることができる
・不動産会社の人と直接会うことで、仲介の依頼先として自分に合っているかを確認することができる
・無料で査定してもらえる

不動産査定はどの不動産会社に依頼する?

複数の会社に不動産査定を依頼するメリットは?

不動産査定は、どの不動産会社に依頼しても同じ、というわけではありません。
査定結果として出される「売却できそうな価格」は会社によって多少のずれがあります。
適正な相場観をつかむためには、3社程度の不動産会社に査定を依頼するのがオススメです。

とはいえ、不動産会社によって大幅に査定価格が違う、ということはあまりありません。
もしも他社と比べて数百万円も高い査定価格を提示された場合は要注意。
その価格で売る自信がある、というわけではなく、自社と媒介契約を結んでもらいたくて高い金額を出している可能性もあります。
また、正確な査定ができるノウハウをもっていない、というケースも。

複数の不動産会社に査定を依頼して相場をつかんでおけば、売れそうな価格とかけ離れた査定価格を提示された場合も見抜くことができるでしょう。

また、複数の会社の担当者に会うことで、相談や質問がしやすい、対応が親切で丁寧など、自分と合う担当者に出合える可能性も高くなります。

不動産会社にもタイプがある

不動産会社にもさまざまなタイプがありますから、個性の違う会社を選んで依頼するのもいいでしょう。査定後、売却活動を依頼する際に、自分にはどんなタイプの不動産会社が合っているかを判断する材料にもなります。

不動産会社のタイプには、大きく分けて下の3つがあります。

●大手ネットワーク型の不動産会社
中広地域に店舗をもち、独自のネットワークを活かした情報収集や集客を広く行えるのが強み。
広い範囲から買主を見つけたいときや、売却したい物件が現在の住まいから離れている場合などにも有利といえます。
企業規模が大きく、サポート体制が整っている傾向もあります。

大手ネットワーク型の不動産会社

広いネットワークを活かして、幅広い集客活動が可能

●売却物件から近い立地にある不動産会社
地元の物件に精通した地域密着型の不動産会社。
近隣の物件がどんな条件で売却できたかなど地元の情報を多くもっています。

また、地元で物件を探している人の情報をもっていることも。 自宅から近いと、相談したいときに店舗を直接訪ねやすい点もメリットです。

売却物件から近い立地にある不動産会社

エリア内の成約事例や家探しをしている人の情報が豊富

●地元での売却実績が多い不動産会社
地元で長年営業している不動産会社には、そのエリアでの売却ノウハウが蓄積されています。
周辺環境の良さや利便性も含めて営業してもらえるので、スピーディーな売却が期待できる可能性もあります。

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地元での売却実績が多い不動産会社

地元で蓄積した売却ノウハウで早期売却が可能な場合も

自宅の売却なら不動産査定で十分

不動産の適正価格を知るためには不動産鑑定を依頼するのが最も信頼性が高いというのは、前述のとおりです。

しかし、自宅を売却するのであれば、時間や費用のかかる不動産鑑定ではなく、無料で依頼できる不動産査定で十分です。

ただし、より精度の高い査定価格を知るためにも、複数の不動産会社に依頼することが大切です。

査定価格と売出価格、実際の売却価格は違う

不動産査定を依頼して売却価格の相場を把握したら、不動産会社に売却の依頼をします。
売却の際には売出価格を決めますが、査定価格で売り出す必要はありません。
査定を受けたあとにリフォームをして高めの価格設定をしてみてもいいですし、できるだけ早く売りたいなら相場より低めの売出価格にするのもありでしょう。
また、購入希望者が値下げを希望した場合、どこまでの値下げをよしとするかは売主が決めることです。
あらかじめ、売却してもいい価格の範囲を決めておくといいでしょう。

まとめ

土地や建物などの不動産の適正な価格を知るために行う不動産鑑定と、売却できそうな価格を知るために行う不動産査定。
このふたつは、似ているようで、活用の仕方が違っています。
単に自宅を売却するためなら無料で気軽に依頼できる不動産査定がいいでしょう。
しかし、相続や離婚で財産分与をするために正確な不動産の価値を知りたい場合や、相続税の申告で土地の評価を下げたいときなどは不動産鑑定を利用するのが適しています。

不動産の価格を知りたいけれど、不動産鑑定がいいのか、それとも不動産査定がいいのだろうかなど、分からないことがある場合は、不動産鑑定士事務所や不動産会社に相談してみるのがオススメです。

 

イラスト/村林タカノブ 

●取材協力/藤田絵理子さん 不動産鑑定士、宅地建物取引士 藤田絵理子鑑定士事務所 代表 不動産鑑定評価業務のほか、不動産に関するカウンセリング、ミドルシニアの住み替えのサポートなど幅広く手がける。整理収納や介護、税務などの専門知識でセカンドライフを支援する女性専門家グループ 一般社団法人うぃーら専門委員
●構成・取材・文/田方みき
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